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  • >【前編】ヤンキー気質の町中華料理屋で、岡田康太(港区家賃3万7千円男)が卓球フルボッコ。

かつての悪漢達(通称ヤンキー)は、ヨロシクを「夜露死苦」と、ブッチギリを「仏恥義理」と当て書き、本気を「マジ」と読んでいた。

筆者が子どもの頃、「夜気側班勝手恋矢(やきそばパンかってこいや)」と旗に掲げていた暴走族を朧げながらに覚えているが、

そんな規則性への反発心とも言えるヤンキー文化は、それ自体が規則性になってしまうという矛盾とともに、徐々に衰退していったように思う。最近はほとんど見ることはない。

しかし、そんな廃れた手書き文化が、亀戸の片隅で、しかも町中華屋の店名として、その灯を絶やさずひっそりと息づいていることを皆さんはご存知だろうか。

その店の名は「佳名℃」。これでカメイドと読む。佳(カ)名(メイ)℃(ド)である。
亀戸にある佳名℃とは、単純なように思えて、いざ店名を口頭で他者に伝える際に、その厄介が明るみになる。


「今回は佳名℃を記事にしようか」

「はい?そりゃカメイドタートルズなんですから」

「いや、亀戸の佳名℃だよ」

「亀戸の亀戸?ああ、男の中の男的なことですかね」

「いや、佳名℃だって!仮名じゃないし、加盟店でもないよ!!」

「・・・私、試されてます?」

実際の編集長と筆者とのやりとりである。一休さんなら「とんち」とみなし、名探偵コ〇ンなら「事件」と息巻くほどにややこしい。いくら私と編集長が元々うまくいっていないとしても、それを差し引いても、他者に説明するのがいささか難しい店名なのだ。

おそらく店主の方が元々ヤンキーで、そのノリでこのような店名になったのだろうと邪推できるが、実はそれだけでは終わらない。

なんとこのお店・・・。

卓球が出来るのである!!

まとめると<卓球が出来るヤンキー気質の町中華屋が亀戸にある>という事実が浮き彫りになるわけだが、正直意味がわからない。わからなければ行くしかない!それがカメイドタートルズである。

万が一に備え、ヤンキーから身を守るためのボディガードとして、うちのバイトを同行させることにした。

「え?ヤンキーが怖くないのかって?うちには今まで倒したヤンキーのリーゼントが1000本近く飾ってあるぜ!」

「取材先で余計なこと言わないでね。お願いだよ」

そしてもう一人、腕っぷしのいい卓球名人を雇うことにした。
噂によると、ご主人(多分ヤンキー)は、卓球が得意らしいので、卓球勝負をけしかけることにしたのだ。取材と危険はいつだって隣り合わせ。

クレイジージャーニーイズムを忘れてはならない。

そこで、白羽の矢が立ったのが、芸能界でもその名を轟かせている卓球名人の岡田康太氏である。

岡田氏は、YouTuber(彼のYouTubeチャンネル『岡田を追え!!』はチャンネル登録者約14万人)としても、ピンポン球の如く跳ねまくっている芸人さんである。今回の取材には打ってつけの存在だ。

しかし、取材の雲行きが怪しくなってきた。


「今日はよろしくお願いします」

「今日はよろしく・・・」

「あの、もしかして元オレンジサンセットの岡田さんですか?」

「え?知ってるんですか?」

 

オレンジサンセットとは、その昔『新しい波』という番組で若くしてデビューしたお笑いコンビであり、岡田氏はまさにその人だったのだ。お笑い好きのバイトが止まらない。

「オレンジサンセットめちゃ好きだったんです!!テレビで見たとき衝撃を受けました!」

「ああ、珍しい方ですね」

「なんで解散したんですか?」

「やめてくれる?そういう回ではないので。岡田さんすみません」

「いえ。単純に、相方と仲が悪くなってしまったんです」

「岡田さんも答えなくていいです」

本当にそういう回ではない

亀戸駅北口から約5分。そのお店は姿を現した。

本当に佳名℃と書かれている。

佳名℃だ。


見上げれば佳名℃。


角にも佳名℃。


電光掲示板にも佳名℃。


「わかったわ!佳名℃なんやろ!」

岡田氏がつっこむのも無理はない。佳名℃と書かれたヤンキー看板が必要以上に多いのだ。おそらくとんでもないヤンキー店主が店内で待ち受けているに違いない。ああいやだ。

 


店内卓球できます 飲食ご利用で無料開放。

飲食する者だけが卓球を許されるらしい。ヤンキーらしいルールである。


「大丈夫かなぁ」

「なんのために呼んだと思っているんだ。ちゃんと岡田さんをお守りしろよ」

 

なんとか意を決し、入店することにした。こちらの予想とは裏腹に「いらっしゃいませ〜」と優しそうな男性店員が出迎えてくださった。

バイトの方だろう。若干拍子抜けはしたが油断は禁物だ。

ヤンキー店主はおそらくこの先の厨房で鍋を振っているはずだ。


「辛いものを食べ、気合を入れたいですね。相手をボコボコにしないといけないんで」

店員が優しそうだったからか、急に気を大きくした岡田氏。舐められてはいけないと、いかにも辛そうな麻辣鍋定食を注文した。

どの料理にもサラダバイキングがついており、お腹いっぱい楽しめそうではある。


「あんまり腹を満たすと、卓球で相手をボコれないから、食べすぎないようにしないと」

「岡田さんはどのくらい卓球をやられてたんですか?」

「中高、卓球部でしたね。インターハイベスト8止まりでしたけど」

「へ〜すごい!」

「でも、最近全然やってないからなぁ」

「まぁ、体が覚えてるんじゃないですか」

「そうですね」

「そうなると、影響を受けた芸人さんとかって誰なんですか?」

「そうなるとって何」

「ベタですが、やっぱりダウンタウンさんは好きでしたね」

「ビジュアルバムとか好きですか?」

「最高ですよね!特に僕はシステムキッチンっていうコントが好きで・・・」

「え!自分もなんです!」

「なんであんなに面白いんでしょうかね」

「あれって、ずっと見てると、ダウンタウンと同じ空間にいる気がしてくるんです」

「わかりますわかります」

「すみません。今日はそういう回ではないので」

そうこうしているうちに料理が運ばれてきた。

これは、美味しそうだ。

円卓を囲み、料理を分け合う。これぞ中華の醍醐味である。
安くて量もあって、しっかりと安定した美味しさを届けてくれる。町中華は本当に日本の宝だ。

ちなみにお店のオススメはピリ辛モツ炒め

味が濃い目でご飯が進む。

この角煮チャーハンも最高に美味しかった。角煮が柔らかく味がしっかりとしている。

正直、記事を書きながらまた食べたくなるほどに美味しい。

さて、岡田さんは、飲食店でのバイト経験も長く、料理には少しうるさい様子。

自身のYouTubeでは、その料理の腕前を惜しげもなくひけらかしている。


「岡田さん、お味の方どうでしょうか?せっかくなので食レポしてもらえませんか?」


「うん・・・辛くて、あと、美味いですね」

「そうですか。ご自身も料理をやられていると思うのですが、味に対しては厳しい方ですか?」

「いや、なんでも美味いですね」

どうやら、なんでも美味しく食べられるタイプの人間らしい。


「何が入ってるかとか、わかるんですか?」

「ああ、わかりますよ。これは・・・花山椒と、コチュジャン・・・」

「ほうすごいですね」

「食べたものはだいたい作れますよ」

「へ〜さすが!」

「そうなると、岡田さんのお笑いの原体験って何だったんですか?」

「そうなるとってなんなの」

「僕、グッチ裕三さんなんですよ」

「珍しいですね!」

「確かにそれは珍しい」

「ほら、ハッチポッチステーションて番組あったじゃないですか?」

「ありましたありました。大好きでした」

「そこでグッチさんが替え歌を歌っていたんですけど、子どもながらにめちゃオモロ!ってなって腹抱えて笑ったんです」

「そこか!ビジーフォーとかじゃないんですね」

「子どもって替え歌をよく作るけど、あんまり面白くないんですよ。じゃあなんでグッチさんのはオモロイんかと分析したんです。多分子どもの替え歌って替えすぎなんですよね。全部うんこにするとかね」

「あ〜うんこね」

「食事中です」

「グッチさんの替え歌は、ワンポイントだけを変えているので、歌の中でフリとオチがあるんです。だからオモロイんやと」

「なるほどなるほど」

「なるほどなるほどじゃないんだよ!!あの、今回はそういう回ではないって言ってるよね?一応グルメ系の記事なので、聞くなら料理に目覚めた原体験を聞いてくれる?」

「すみません・・・」

「ああ、そういう意味では料理をやろうと思ったのも、グッチさんの影響ですね。グッチさん料理の天才ですから」

「ははは!結局グッチさんじゃないですか!」

「・・・これでグッチさんが亀戸の出身だったら最高なんだけども」

 

ちなみにグッチさんの出身は板橋区である。

 

いよいよヤンキー店主登場!そして卓球勝負へ・・・

さて、本題はここからである。
近くにいた女性店員に、店主と卓球勝負がしたい旨を伝え、お呼びしていただくことに。

佳名℃と名付ける人物である。

かなりのヤンキー気質であるはずで、もし絡まれるとしたら、真っ先にやられるのは岡田さんであることは明白だ。

・・・明白な笑顔である。

脳内で彼を守るシミュレーションをしながら、我々はヤンキー店主を待った。

しかしそこにやってきたのは・・・。

冒頭で出迎えてくれた、優しそうな店員であった。

「あの・・・あれ・・・店主は?」

「あ、私です」

「こう聞いたほうがいいかな?ヤンキーを出せ」

「ヤンキー?なんですかそれ?」

「本当に店主さんなんですか?」

「もしかして、落ち着いちゃって逆に優しそうに見えるパターンですか?」

「ああ、ヤクザが牧師になるやつですよね」

「ヤクザじゃありませんよ」

「あの・・・元々ヤンキーだから、佳名℃って当て字を使っているんですよね?」

「あ、いやいや、面白いかなぁと思って」

話を聞くと最初は普通の中華屋のように〇〇苑とか、〇〇軒とかにする予定だったとか。


「でもそれだとインパクトがないじゃないですか」

「いやだからって、戸を℃で表現するのはヤンキーの悪ノリに近いですよ」

「本当にヤンキーでもマフィアでもチーマーでもありませんよ」

なんだぁ〜と、ほっとする一同。中華を食らい、肩透かしを食らい、お腹も心も満腹状態である。

「あの、店主さんにご相談があるのですが。芸能界が誇る卓球名人をお連れしたので、勝負していただくことはできますか?」

「もちろんです」

「もしこちらが勝ったらタダにして下さいね」

「いや、それはできません」

「いや、私が払うんで大丈夫ですよ」

店長さんが優しい人で、どこか拍子抜けしてしまったが、やがて恐怖の淵に落とされることになろうとは、その時はまだ、知る由もなかった・・・。

ということで、戦慄の卓球名人勝負は後編で。

 

スポット紹介

スポット名:佳名℃
住所:〒136-0071 東京都江東区亀戸5丁目5-6 ラポスタビル101号
電話番号:03-3685-5221
アクセス:JR総武線亀戸駅 徒歩5分
営業時間:11:00~15:00 17:00~23:00(L.O.22:30)
定休日:日曜日(宴会時のみ営業)

 

Edit by カメイドタートルズ編集部