【後編】絶品ステーキの舞台裏には22年間の男の苦労。「ミスターデンジャー」で肉の旨さを知る

▼前回までのあらすじ
一頭の牛から2kgしか取れない希少部位、”ハンギングテンダー”の味を堪能したカメイドタートルズ取材班。このぶっちぎりに美味いステーキの味を秘密を探るべく、オーナーの松永光弘さんにインタビューさせていただくことに。デスマッチを得意とした元プロレスラー、「ミスターデンジャー」の人柄に触れていく。

【前編】絶品ステーキの舞台裏には22年間の”男”の苦労。「ミスターデンジャー」で肉の旨さを知る

とにかく安く、美味しいステーキを追い求めて
狂牛病、他店舗展開での失敗、苦難を乗り越え…
亀戸という土地の温かさ
ミスターデンジャーお得情報

とにかく安く、美味しいステーキを追い求めて

–デンジャーステーキ、本当に美味しかったです。量のわりに値段がすごく安いですよね？

美味い肉を安く、たくさん食べて欲しいという想いは昔から変わりません。この22年間、消費税の増税なんかも何度かあったけどなるべく値段を上げないように頑張ってきました。

この亀戸の地域の方々の支持もいただき、この値段で22年間やってこれたんです。

▲デンジャーステーキ1ポンド。ライスとスープが付いて、なんと2,550円という安さ

–牛一頭から2kgしか取れない希少部位を使っているんですよね。安く提供できているコツはなんなんですか？

希少部位といっても、ハンギングテンダー自体は安く仕入れられますからね。いわゆる横隔膜の筋肉（内臓肉)なんですけど、焼肉屋とかでは「サガリ」と言われてる部位です。「ハラミ」が横隔膜の腹部側の肉で「サガリ（ハンギングテンダー）」が背中側の肉。

ハンギングテンダーは旨味が抜群なんですけど、筋（スジ）と脂（アブラ）が多くて。美味しく食べられるようにする仕込みがとにかく大変。ジャガードという器具で丁寧に肉の繊維を切って、柔らかくしてあげるんです。筋を全部取り除くというのは並大抵の作業量ではないですよ。

もっとも、これはどこのお店でもやっている作業で特別なわけではないですが。トンカツ屋とかでもやってますからね。

–肉を噛んだ時、その柔らかさに驚きました。本当に丁寧な仕事をされていると感じます。

肉の柔らかさには自信があります。老若男女、誰にでも食べられるステーキですから。

意外と女性とかでも1ポンド（約450g）をペロッと食べられる人は多いです。ウチに来てくれるお客さんはガタイが大きい男性ばかりというイメージがあるかもしれませんが、実際はファミリー層が多いんですよ。お年寄りにも子供にも、みんなから愛されるステーキなんです。

–ソースも6種類と多いですよね。どれも本当にお肉との相性抜群で、オリジナルの味付けなんですか？

ソースは全部、オリジナルで妻が1人で手作りしているんです。どのソースも好評で人気はあるんですけど、種類が多いからソースの仕込みも大変。妻には「6種類じゃなくても良いよ」「大変だから減らしたらどうだ？」と提案したことがあるんですが、聞き入れない。

22年間やっている内に、ソースに対して強いこだわりができたんでしょうね。結婚してからずっと2人で店を続けてきましたから。

子供向けに甘いソースがあったり、刺激が欲しい人向けに辛いソースがあったり、色んなニーズを満たせるのは良いと思います。

狂牛病、他店舗展開での失敗、苦難を乗り越え…

–22年間、お店を休むことなく続けてきた中で大変なこともあったかと思います。印象に残っていることはありますか？

2000年代初頭の狂牛病（BSE）の時は、やはり大打撃を受けましたね。牛肉を使って商売しているところなら、どこでもパニックになったとは思いますが。

水道橋にお店を出した時もうまくいかなくて撤退したり。フランチャイズとかもあまりうまくいかなくて、気苦労はありましたね。

2019年の今年は、厨房の電化製品たちに軒並みガタがきて、買い換えることになったり。これもかなりの出費ですよね（笑）お店の中も色々とガタが来てるんですが、DIYでなんでも直しちゃう。業者に頼むと高くつくので自分たちで頑張って節約してますね。

–あらゆる苦難を乗り越えて、これまでお店を経営できた理由はなんでしょうか。

まぁ、数百万円単位の損害が出るトラブルなどもありましたけど、なんとか持ちこたえることができたのは、この亀戸の店があったからですね。元プロレスラーである私自身が看板になって、たくさんのお客さんに来店していただき、支えられてきました。プロレスファンもそうですし、最近ではR-1グランプリ（※）の動画を見て「ミスターデンジャー」のことを知ってくれた人もいます。その繋がりで芸人さんのライブに呼ばれたり、新しく出会う人も増えました。