ある日、カメイドタートルズ編集部に一通のメールが届いた。
亀戸にしゃもじを祀る神社があるというのである。
しゃもじとは、ご飯をよそう際に使用する、あのしゃもじのことだろうか?もしそうだとするなら一体何のために?はたまた、ガセネタなのだろうか?
真相を確認するために、その神社へと向かった。
しゃもじを祀る石井神社
こちらが、しゃもじを祀っているという石井神社である。外観にはしゃもじ要素は感じられない。
本当に、しゃもじを祀っているのだろうか。一抹の不安が頭をよぎる中、境内を進む。
本当にあった。紛れもないしゃもじである。しかも、お米が張り付きにくい突起付きだ。
なぜ、こんな歴史を感じる神社にしゃもじが置かれているのだろうか。
過去に、どこかのひょうきん者が、オフザケでしゃもじを置いたところ、皆が面白がってしゃもじを置くようになったとでもいうのか。
さらに、社殿の中には巨大なしゃもじが祀られていた。
この巨大なしゃもじには、昭和62年に奉納されたと書かれている。
少なくとも30年も前からしゃもじを祀っていて、神社公認となると、ひょうきん者による犯行説は薄くなる。
しゃもじを祀っている理由は、鳥居横に設置されたしおりに記載されていた。
しゃもじが祀られている理由
石井神社は弘仁2年(811年)、弘法大師により発見され、通称「おしゃみじさま」とか「おしゃもじ稲荷」とか呼ばれ、咳の病を治すご神徳があると言い伝えられております(しおりより引用)
元々、石井神社は石器時代の石棒をご神体として祀り、咳を静める石神様を信仰していた。この石神(シャクジ、サクジ)の発音が「杓子(シャクシ)=しゃもじ」に似ていたことから、いつの頃からか、しゃもじを祀るようになったのだという。
その歴史は古く、江戸時代である1820年に刊行された書物『野万舎随筆』には「亀戸村にオシャモジという神の祠があり、そこにはたくさんのしゃもじがある。そこでしゃもじを奉納して願うと咳の病が治る」という記述が残されているそうだ。
先ほど、しゃもじを見つけたこちらは、おしゃもじ棚と呼ばれるもの。
参拝の際、このおしゃもじ棚からしゃもじを一本借りて自宅に持ち帰り、ご神体として拝む。そして病が治ったらお礼として、借りたしゃもじと新しいしゃもじの2本を、このおしゃもじ棚に返却する。これが、このおしゃもじ棚の利用方法。
つまり、冒頭で紹介した突起の付いたしゃもじ。あれは誰かの病を治し、そのお礼としてこのおしゃもじ棚に置かれたものなのだろう。そして、この白いしゃもじがまた誰かの家に貸し出され、そこで病を治す。この石井神社を起点として、おしゃもじ様が病に苦しむ家庭を巡るのである。
おしゃもじ様が治してくれると言われている咳の病。これはひと昔前まで不治の病と言われていた結核のことである。現在、医療の進歩によって、結核はそれほど恐ろしいものではなくなった。しかし、人類は新たな脅威に襲われている。新型コロナウイルス感染症という咳の病だ。
一日も早くこの咳の病に打ち勝てる日が来ることを祈って。
スポット紹介
住所:〒136-0071 東京都江東区亀戸4丁目37
アクセス:東武鉄道亀戸線亀戸水神駅 徒歩8分
Edit by カメイドタートルズ編集部