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亀戸の路地裏にかき氷を出すバーがあるらしい。
バーなのにかき氷とは。
クラッシュアイスを入れたカクテルはかき氷とも言えなくはないが、完全なかき氷となると、バーには場違いにも思える。お酒と甘いものに目がない編集部は、ワクワクしながら調査へ向かった。

バーには場違いな極太筆文字の「氷」

場所はJR亀戸駅から徒歩7分。大通りから少し路地を入ったところにあるビルの一階にその店舗がある。
外観はバーのようにも見えるが、大きく氷と書かれた看板と旗のせいで、バーとしての雰囲気はあまり感じられず、違和感がすごい。

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本当にここはバーなのか?

あまりの怪しさに入店を躊躇していると中から人が・・・。


「ようこそ!いらっしゃいませ!」

迎えてくださったのは代表の伊藤さん(画像右)と松浦さん(画像左)。なんかいかつい?少々強面にビビりつつも、さっそくお聞きした。


「あ、あの・・・バーなのにかき氷を出すとお聞きしたのですが」

「はい、こちらのバーでは当店オリジナルかき氷をお出ししています」

「バーなんですよね?」

「はい、正真正銘バーです」

確かに店内にはバーカウンターがあり、その後ろにはたくさんのお酒が棚に並んでいる。

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こんなところで、どんなかき氷が食べられるのだろうか?実はかき氷と言う名のヤバいものが出てきてしまうのでは?騙される覚悟で噂のかき氷を注文することにした。

バーテンダーが作るかき氷

出されたメニューには「特製フルーツかき氷」「BARのかき氷」「ザ スペシャリティーズ」の3種類があり、かき氷自体は全部で8つある。

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フルーツはイメージできるが、メニューの下に進むにつれ味の想像がつかない。
悩む・・・ここは伝家の宝刀を使う時だ。

「おすすめをください」

「人気なのは苺と桃ですが、おすすめはパッションモヒートとクリームチーズバルサミコです」

せっかくなので、おすすめされた2つのかき氷をいただくことにした。
ちなみにカクテル名の付いたかき氷であるが、全てノンアルコール!
(※アルコール提供可能時には各々に合うリキュールの追加も可能とのこと)

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「こちらの氷は何かこだわりが?」

「詳しいことは秘密ですが、バーでの営業時から使用しているこだわりの氷なんです」

バーの高級そうな雰囲気もあってか、削り出された氷は普通のかき氷よりも綺麗に見えた。そんなことを考えていると、お皿の中は氷でいっぱいに。

これでシロップをかけて終わりかと思いきや、成形し始めるマスターの伊藤さん。

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「まだ、完成じゃないんですか?」

「まだまだです!あと2段入りますよ」

既にお皿からはみ出すほどであるのに、ここからあと2段。トータル3段のかき氷を盛るとのこと。
いったいどんなことになってしまうのか。

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氷を削る松浦さん。シロップやトッピングで飾り付けていく伊藤さん。息の合ったコンビにより2つのかき氷は、とてつもないスピードで完成していく。


「お待たせ致しました。パッションモヒートです」

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「お待たせ致しました。クリームチーズバルサミコです」

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成形という名の圧縮をされたかき氷。正直2つも頼んだことを少し後悔したが、とりあえず食べることにする。

パッションモヒートは、パッションフルーツが種ごと砕かれたシロップにミントシロップとミントの葉が入ることで、ノンアルコールでありながら、カクテルのモヒートそのものの味に。フルーツの甘さと、酸味、ミントのさわやかさとほろ苦さで、暑い夏にぴったりなさらっとしたかき氷である。

一方でクリームチーズバルサミコは、クリームチーズがシロップのようになり、かき氷ではなかなか味わえないコクを感じることができる。そこにバルサミコソースが加わることで、チーズの濃厚さを軽やかにしている。最後にトッピングされるパルミジャーノによって塩味が加わり、かき氷でありながら甘じょっぱく、デザートというより食事のようなかき氷だ。

ふと気付くと、可愛らしいティーカップにお茶が注がれている。

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あれ?これ頼んでないんですが?(まさかこのお茶!よくあるバーの手口ってやつなのか!)」


「セットでお出ししているオーガニックのルイボスティーです。かき氷を頼んだ方には無料でお出ししています」


「(む、無料だと!?正気か?)」

疑いつつ飲んでみる。かき氷で冷えた身体に温かいお茶がしみわたる。どこか回復効果を感じるお茶のおかげで、あっという間に2つを平らげてしまった。

バーなのに、かき氷を提供する理由

お腹が満たされたところで取材を開始。
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「さっそく本題を聞きたいのですが、なぜバーなのにかき氷を出しているのですか?」

「実は新型コロナウイルスの影響なんです。
緊急事態宣言が発令されると、お酒が提供できなくなります。となるとバーは営業できない。そこでバーではあるものの、お酒以外のものを提供してどうにか営業できないかと思い、さまざまな情報を集めました。その中で、有名なかき氷屋って案外駅から遠く、裏路地のようなところで隠れ家のように営業しているなと気づき、バーも似ていると思ったんです。で、そこからかき氷を提供する準備を始めました」

「かき氷の販売経験はあったのですか?」

「いえ、かき氷は初めてでした。でも、氷はバーで使っているし、シロップやトッピングもバーで使用していたフルーツなどを用いればいいなと」

最近の言い方で言うならば、SDGs。その中でもフードロス対策に取り組んでいると言えるのではないだろうか。


「販売準備から実際に販売までどのくらいの時間がかかりましたか?」

「6月末頃に発令された緊急事態宣言から始動して、実際に販売を始めたのは2週間後ですね」

「え?早くないですか?」

「あはは、頑張りました」

「メニューはどのように考えているのですか?」

「フルーツはなるべく旬なものを用いるようにしています。あとバーならではとすると、バーで人気のカクテルをかき氷にしてみたり。2人であーでもないこーでもないと試行錯誤しています。販売開始までの2週間は試作続きで、ずっとかき氷を食べ続けたので大変でした」

「それはそれは・・・でもそのおかげで美味しいかき氷をいただくことができるのですね。ちなみに、
店名の『ちあろ』の由来は?」

「イタリア語で明るいという意味の『Chiaro(キアーロ)』をローマ字読みして『ちあろ』としています」

「なぜ亀戸に出店を?」

「元々、新小岩で勤めていて独立を考えた際、亀戸の下町感が良いなと思って。近いけれど錦糸町にはその雰囲気はないじゃないですか。移転してみて、亀戸はお店同士の仲が良く、人情味に溢れているなと実感しています」

「かき氷の販売を始めて変わったことは?」

「客層が変化しましたね。もちろんバーの時のお客様も来てくださるのですが、それ以外に、バーには行くことができない未成年の学生さんや、ベビーカー連れのママさんとか。あとはバーへ行くのにハードルを感じていたという方も」

「かき氷が新たなアプローチになったのですね」

こちらはベビーカーでも利用できる席。
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魅力あふれるバーテンダー

会話を進めていくなかで、2人の隠された魅力が見えてきた。

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(物静かで、何事も「少しだけですよ?」と謙遜する松浦さんですが実は・・・)


「SNSやメニューにかき氷のイラストが描かれていたのですが、どなたの作品ですか?」

「彼が(松浦さん)が完成したもの(かき氷)を見ながら作成しています」

「そうなんですね!絵を習われたりしていたのですか?」

「いえ、特には」

「かき氷のイラスト以外に、店の外の黒板と大きな木製看板、店内のメニューなど全て彼のお手製なんですよ」

「たいした事ではないですよ・・・。」

強面で淡々と作業をしていた松浦さんにこんな一面があったなんて、驚きである。

外の黒板と大きな木製看板。木製看板の方は、ただ板に文字が書いてあるわけではなく、彫刻が施されている。
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店内メニュー。中心のシェイカーをよく見ると「BAR CHIARO」の文字でできている。どれもとても独学でやられているとは思えないほどのセンスとクオリティだ。
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他にも何か特技を隠していませんか?」

「実は彼(松浦さん)コーヒーの資格も持っているんです。お茶にも詳しく、先ほどのルイボスティーは彼のこだわりの逸品です」

「詳しいだなんて。ほんとちょっとだけです。資格も下の方のやつですし」

コーヒー検定は下の方でもなかなかの難易度だと思うのだが・・・奥ゆかしい。


「そういえば、かき氷のメニューにあるカルーアミルク、ここに記載されているコーヒーシロップってもしかして」

「そうです、彼がチョイスしたコーヒーで作りました」

「となると、シロップもお手製とおっしゃっていましたが、もしかしてフルーツ以外も自家製なのですか?」

「はい。ほぼ全て自家製です。たとえば黒蜜ラムレーズンは、黒蜜もラムレーズンも自家製。あ、黒蜜はさすがにサトウキビからではないですけどね(笑)」

サトウキビでなくとも、かき氷のために黒砂糖から蜜を作るのもなかなかのこだわり方なのでは。


「伊藤さんも特技を隠していたりしませんか?」

「実はテキーラマエストロの資格を・・・」

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おもむろにバーカウンターの奥から出されたのは資格のバッチ。


「やはり隠し特技をお持ちでしたか。テキーラの資格とはさすがバーのマスターですね。カウンター後ろのお酒もさぞこだわりが?」

「はい、もちろんバーですからね!種類毎に棚に収納していて、ここに入りきらないものも。レアなお酒もちょっとありまして・・・」

と、さらに奥から4本の瓶を出す伊藤さん。
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「国産のウイスキーです。左が静岡のもの、右が北海道の厚岸のものです。どちらも人気で、抽選でしか買えないんですよ」

「そんなレアものが4本も!」

「あ、同じ名前の2本同士ですが、1つずつ違うんです。静岡のものはKとWとあり、これは蒸留する口が違うんです。その違い1つで味も風味も異なります。
厚岸の方も見た目は似ていますが、左はブレンデッドウイスキー、右はシングルモルト。味も香りもまったく違うものなんですよ」

「勉強になります」

といったところで、調査は終了。
ただバーにかき氷を食べに行っただけなのに、色々なこだわりを聞かせていただき、大満足である。
そんな2人がいらっしゃる「BARちあろ」。

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かき氷の提供は今年は9月末頃までとのこと。
バーテンダーが作るこだわりのかき氷、気になった方はぜひ訪れてみてはいかがだろうか。

スポット紹介

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スポット名:BARちあろ
住所:〒136-0071 東京都江東区亀戸2-43-8 カナメビル1F
電話番号: 03-5875-1931
アクセス:JR総武線亀戸駅 徒歩7分
営業時間:11:00~17:00
定休日:木曜日

Edit by カメイドタートルズ編集部