「ボス、事件です」
「エージェントK、どうしたの?」
「情報部が入手したある情報です。こちらをご覧ください」
「これは?」
「2か月ほど前に開設された、新たな亀戸ご当地サイトです」
「まずいわね。コード0400を発令します。エージェントK、これは私の方で対処する。報告ありがとう」
「Prrrr….ガチャ、はい・・。」
「仕事よ」
「了解・・・」
―――――――――――――
運営開始から約2年。カメイドタートルズに未曾有の危機が訪れた。亀戸に新たなご当地サイトが立ち上がったのである。
この事態に、我々タートルズ編集部はコード0400を発令。「掃除屋」の異名を持つ特務チーム「deleters」を対応にあたらせたのだった。
要するに、新サイト管理人に難癖をつけてクレームを入れようとしているのである。
『亀戸さんぽ』管理人にコンタクトをとる
問題のサイト『亀戸さんぽ』は、開設間もないサイトでコンテンツ数こそ少ないものの、亀戸の情報を発信するご当地サイトである。
亀戸には複数のご当地サイトが既に存在している。我々カメイドタートルズは、その中で言えば後発組で、先輩サイトにあたる『亀戸プロ』や『アイラブ亀戸』には、うまいこと取り入ることに成功し、お互いのサイトを相互リンクさせるなど良好な関係を築いていた。しかし、後輩サイトとなれば話は別だ。将来的に、そのサイトが有名になってしまっては、我々の立場がなくなってしまう。
ただでさえ、亀戸限定の情報というニッチなサイトなのだ。亀戸の人口は約6万人。この限られたパイをこれ以上、他のサイトに渡すわけにはいかない。『亀戸さんぽ』を今のうちにつぶしておく必要があるのだ。相手は立ち上げ2か月の生まれたてのサイト。赤子の手をひねるも同然だ。
思い返せば、カメイドタートルズは既に2年運用し、これまでに様々な実績を積み上げてきた。
ある時は神社の鳥居でトライを決めようとして物議を呼び(「香取神社ラグビー企画」)、「ロケット館紹介企画」では公衆トイレをわざわざ記事にするんじゃないと社内で注意された。最近では先日公開した「キッチンDIVEライブ配信インタビュー企画」にて、YouTube視聴ユーザーにカメイドタートルズなんて知らないぞと集中砲火を浴びたのだ。
そんな我々だから、若い芽は早いうちに摘んでおかないといけないのである。
さっそくTwitterのDMから取材を申し込む。
喧嘩腰で乗り込みたいところではあるが、そこは大人。しっかりと礼儀をわきまえる。
これがプロの交渉術だ。
ほら、まんまと罠にかかった。こうなれば、こっちのものである。一度取材を取り付けてさえしまえば、もはや手のひらの亀。いかようにもできる。しかし、相手もなかなかだ。
我々の思惑に勘づいたのか、警戒心をあらわにする『亀戸さんぽ』。
一切の身バレはさせないという条件付きではあるが、取材にこぎつけた。
『亀戸さんぽ』管理人を直撃
「どうも!初めましてカメイドタートルズ編集部です。本日はありがとうございます!」
「まだ、立ち上げたばかりの弱小サイトなのにお声掛けいただきありがとうございます!」
「え?女性?」
「はい。そうですが、どうかしましたか?」
「にっしー」といういかにも適当に設定したであろう管理人名、公開記事の二本目に亀戸餃子を持ってくるあたりから、何となく男性を想像していたのだが管理人は女性であった。しかし遠慮などしない。
「あのー、困るんですよね。うちのショバで勝手なことをされちゃうと」
「なにか、してしまいましたか?」
「なにかじゃないよ、なにかじゃ。亀戸には既にいくつもご当地サイトがあるのよ。今さら新しいサイトに出てこられると困るんだよね。亀戸じゃなくても他にもあるでしょ。なんで亀戸なのよ」
「亀戸が好きでして。それで町の魅力を皆さんに伝えたいと思ったんです」
「だーかーら。もうやってんのうちで!そもそもうちの真似事やめてもらえます?見てよこれ、サイトカラー、緑じゃん。パクってるでしょ。証拠はあがってんの!」
「パクってないです。亀と言えば緑かなと思いまして単純に」
「うちのサイトが単純って言ってます?そちらがそう来るなら色々とお聞かせいただこうかな」
「わかりました・・・」
次回、『亀戸さんぽ』に難癖をつける。
後編はこちら
※この物語は事実を元にしたフィクションです。かなりの脚色を加えています。
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Edit by カメイドタートルズ編集部