• トップ
  • >食べる
  • >「頭がおかしい」を自称するバーで、日本料理人が「本気の親子丼」を作っていた

日本料理。それは日本の伝統的な食材、調理方法を用いた料理であり、どこか格式高く感じてしまう響きがある。
そんな日本料理を専門とする日本料理人が作る「本気の親子丼」を亀戸で味わえることをご存知だろうか。

 

その店があるという場所に行ってみると、あったのは頭のおかしいバー


「本当にここで日本料理人が作る『本気の親子丼』が食べられるんですか・・・?」

「住所はここで合ってるはずなんだけど・・・」

「あ、カメイドタートルズさんですか?お待ちしておりました!どうぞこちらへ」


出迎えてくれたのは、ラフな格好をした男性だ。

我々が想像していた日本料理人は、このような風貌。たぶん従業員だろう。


「とりあえず、中にご案内します」



エレベーターで店舗がある階に移動すると、そこには「バーアタオカ」という頭がおかしいことを店名にした、いかれたバーの看板があった。


「あの、ここバーアタオカって看板に書いてあるんですが、本当にここで合っていますか・・・?」

「ああ、驚きますよね(笑)。大丈夫ですから。本当に大丈夫ですから、入ってください。大丈夫ですから、大丈夫大丈夫」

「大丈夫じゃない気しかしないんですが、大丈夫ですか?」


亀戸一のクソ店舗とのこと。本当に大丈夫なのだろうか。不安しかない。


「・・・。(とりあえず出口は確認しておこう)」


店舗の中はバーそのもので、さまざまな種類のお酒が並べられており、カラオケも完備。


「本当にバーですね」

「ここのバーを間借りする形で営業しているんです」

「バーを間借りして営業する日本料理・・・。珍しいですね。早速なんですが、日本料理人の方を呼んでいただけますか?」

全てにこだわる日本料理人 田村昌哉


「私がその日本料理人ですとも」

「いやいや、違うから。我々、お店の情報を事前に見てます。この写真が店主の方ですよね。そんなキャップをかぶるタイプの人には見えません」

 

我々の不安を払拭するために、ご丁寧にパワーポイントを使って自己紹介してくれた。

田村 昌哉さん
高校卒業後の12年間、船橋にある「稲荷屋」で日本料理を修行。その後、銀座の日本料理屋で更に技術に磨きをかける。千葉県調理師会主催の料理コンクールにおいて4年連続入賞を果たし、日本料理の実技講師としても活躍。若い世代の意見を聞き、日本料理界を活性化させる活動もしているとのこと。
現在では「出張料理」や「店舗を持たない料理人」として活動している。


「なるほど。一応はあなたが日本料理人であることを信じましょう。でも、それほどの経験・技術を持っているのに、店舗を構えなかった理由はなんですか?」

「昨今の情勢でお店を構えるのが難しかったこともありますが、あえて間借りという形を利用して、入りやすく・地域に馴染みやすいお店を目指したからです。日本料理屋は格式高いところが多く、そこを含めて好きな人もいるとは思います。しかし、全部が全部そうである必要はないと考えています

「にしても、バーアタオカは・・・。間借りする場所を間違えてないですか?入るのをめちゃめちゃ躊躇しましたもん。あ、これ絶対中から怖い人出てきて、お金取られちゃうやつだって」

「個性的ではありますが、店長もオーナーも会ったらとても良い方ですよ。バーの店長、 色々と謎な人ですけど・・・

「・・・そちらも取材の必要がありそうですね」

「現在はここでお店を開いていますが、今後の展開とかは考えていたりしますか?」

「それが特にないんですよね(笑)。ただ、料理という手段で、より人の心を豊かにしたいという想いのもと活動をしていく予定です。亀戸の人たちも温かく迎え入れてくれて、とても居心地が良いので離れようとは思いませんね!

「日本料理の実技講師としても活動されているとのことですが、何かエピソードとかありますか?」

「これです


唐突にキャップを脱いだ田村さん。毎日手入れをしているであろうスキンヘッドが、親子丼に使われる卵を彷彿とさせる。


「このキャップ、実は教え子と作ったものなんです。一緒になってキャップとユニフォームを作ったんです。気持ちや心の繋がりも大切ですが、こうやって物として残ると嬉しいですよね

「あ、そっちすね。ユニフォームといえば、料理人は白の調理服を着ているイメージなんですが、普段の営業から私服なんですか?」

「最初はいかにも日本料理人っていうユニフォームでやっていたんですが、ここのオーナーに『バーに入ったら白衣の男がいて頭が混乱する!』と言われてしまいまして(笑)。今ではお客さんが入りやすくする意味でも私服で営業しています

「場所変えた方がいいんじゃ・・・本当にここで営業しているんですか・・・?」

「あ、もしかして信じてませんね?ちょっと待ってくださいね!


そう言うと慣れた手つきでテキパキと準備を始めた田村さん。


「普段、昼は私のお店、夜はバーとして営業しています。この『二毛作』のようなやり方はビジネスとして良いと思っていて、お互いに支出を最小限に抑え、利益が出る共存関係になっているんです

「『日本料理人が作る本気の親子丼を提供する』とうたっていますが、特にこだわった部分はありますか?」

「全て、ですね

「・・・、その中でも更にこだわった部分はありますか?」

「だーかーら

「全て」を強調するのには理由があり、日本料理は素材が命とのこと。実際に生産者の元へ足を運び、その中から試行錯誤、納得のいく料理が出来るまで全てにおいて情熱を注いだと語る田村さん。
また、付け合わせのお味噌汁に使用する味噌は、亀戸へのリスペクトを込めて「佐野みそ 亀戸本店」で購入しているという。お客さんからの評判もよく、本人も気に入っていると誇らしげだった。


「店で提供する料理を親子丼にしたのにも理由があり、バーのキッチンという最低限の環境で作れて、最大限に美味しいものが親子丼だったんです。鶏肉を焼くにしても、普通の焼き鳥だと炭火焼きには劣ってしまいますから

そんな気さくな、日本料理人歴15年の田村さんが作る「本気の親子丼」を後編で紹介する。

 

スポット紹介

スポット名:田村昌哉の店
住所:〒136-0071 東京都江東区亀戸2−26−5亀戸第2ミハマビル2F
アクセス:JR総武線「亀戸」駅 徒歩3分
営業時間:11:30〜15:00(14:30ラストオーダー)
※営業日・定休日が毎月異なるため、最新情報はTwitterにて要確認

Edit by カメイドタートルズ編集部