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  • >亀戸にある自己主張とこだわりが強すぎる店の「親子丼」を食べに行く

前回、バーアタオカという「頭がおかしいバー」を自称する店舗を間借りして、本気の親子丼を出す日本料理人 田村 昌哉さんを紹介した。後編ではやっと看板メニューである親子丼を紹介する。

全てにこだわったと豪語する田村さん。その親子丼の味は一体。

前半はこちら

 

こだわりの強い日本料理人が作る本気の親子丼


「早速なんですが『本気の親子丼』を食べさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「もちろんです!こだわり抜いているので、食材の説明に2〜3時間かかりますけど、大丈夫ですかね?」

「じゃあ説明はいらないです」


「・・・。やっぱり、少しなら説明してもいいですよね・・・?」

「・・・まあ、ちょっとなら、はい」

まず説明されたのは卵。田村さんの親子丼は、親子丼を「閉じる卵」と「乗せる卵」の二種類ある。閉じる卵だけでなく、温泉卵を乗せることでより味わい深いものとなるそうだ。
乗せる卵が温泉卵になっているのは、白身を捨てずに食べるための工夫とのこと。


「やっぱり食材を捨てるのは心苦しいので、できるだけ全てを美味しく食べられるようにしています。生産者さんに会いに行くことが多く、とても苦労して作っていることを知っているからです。それを無駄なく調理して提供することが料理人の義務だと思っています」

「急にそれらしくなりましたね」

「料理人はお客さんから感謝されますが、生産者さんはそういった意味でのスポットライトが当たりにくいんです。なので、もっと生産者さんを可視化できるような仕組みを作りたいと思っています」


親子丼に使う出汁は、田村さんが6時間をかけて作ったものだそうで、そのこだわりが美味しさを生むという。
また、使用する醤油は創業1616年のヒゲタ醤油。


「日本料理の基礎と言ってもいい出汁にはとてもこだわっています。北海道の一等級昆布と、血合いを取らない鰹節を使うことでですね・・・

「あ、長くなりそうなんでもう大丈夫ですよ」


お米は田村さんの出身地である千葉県の「粒すけ」を使用。


「この粒すけは、千葉県が13年もの歳月をかけて開発したお米なんです

「13年は重みがありますね。新生児が中学生になる年月ですもんね」

「粒すけの特徴は、程よい弾力と粒の大きさで、丼ものにとても合うお米なんです!

「(あ、自分の世界に入っちゃった)」

「そして忘れてはいけないのが、親子丼における親の存在!


鶏肉、卵ともに千葉県の銘柄鶏である水郷鶏を使用。弾力のある肉質と強い旨味が特徴だそうだ。今回いただく親子丼の「竹」では胸肉ともも肉の2種類が使われる。


「調理法にもこだわっていて、あえて他の具材と一緒に鶏肉を煮ないんです。鶏肉はあらかじめ低温調理をしているため、素材本来の強い弾力と旨みを残します。一緒に加熱してしまうと出汁を吸って鶏肉の旨味が際立たなくなってしまうんです


全てにこだわっていると豪語していただけあり、並々ならぬ情熱を感じる。


また京都から取り寄せた「ゆず辛・山椒・黒七味」3種類の薬味から一つを選ぶことができるようになっており、好みに合わせてカスタマイズが可能。


「味濃いめや、卵三つ使って作ってくれ、といったお客さんがいますね。店にある材料でアレンジできるならいくらでも対応します!いつか、親子丼親子なし!なんて注文が来たら、やってやろうかと意気込んでいるんですけどね(笑)

「冗談がうまいんですね」

「・・・。もう完成しますので、席に座っていてください!


「(そういえばここ、バーだった)

「(そういえばここ、バーだった)」

バーで食べる親子丼



テーブルに運ばれた瞬間から広がる出汁の香り。場所はバーだが、出された親子丼は紛れもなく日本料理である。


「いただきます!」

「いただきます!


冗談抜きで、我々は衝撃を受けた。今まで食べてきた親子丼とまるで別の料理だと。あれは、あまじょっぱさでご飯を食べていただけ。しかし、この本気の親子丼は、本当に全てが互いを引き立て合っているのだ。


「私、一般的な甘ったるい親子丼ってあまり好きじゃないんですが、この親子丼は全くの別物ですね。鶏肉の旨味が折り重なって、満足感が溢れてきます!運動会で二人三脚をする親子のよう。運動会の何カ月も前からお互いに歩幅を合せ、速度を合せ、ゴールという目標に向かって練習を積み重ねてきた。そんな親子を感じます

「編集長がちょっと何言ってるか分かりませんが、もも肉・胸肉が部位ごとに違うのが分かります。食感はもちろん味もまったく違って。丼ものと言うと後半飽きてくるんですが、それが一切ない。いくらでも食べたくなります


その一言に田村さんの15年が詰まっているような気がした。


田村さんのお店では「松・竹・梅」の親子丼のほかに、鶏天婦羅丼と水郷鶏そぼろ丼も提供している。また鶏皮煎餅、チーズ、鶏天婦羅などのトッピングや各種カスタマイズも可能だとか。

ぜひ皆さんも「本気の親子丼」を自分好みにカスタマイズして、「自分だけの親子丼」を食してみてはいかがだろうか。店の趣きこそやや入りづらいところがあるが、一度ここの親子丼を食べてしまったなら、またこの店に来ずにはいられなくなる。それこそアタオカと言われるほどに。

 

スポット紹介

スポット名:田村昌哉の店
住所:〒136-0071 東京都江東区亀戸2−26−5亀戸第2ミハマビル2F
アクセス:JR総武線「亀戸」駅 徒歩3分
営業時間:11:30〜15:00(14:30ラストオーダー)
※営業日・定休日が毎月異なるため、最新情報はTwitterにて要確認

Edit by カメイドタートルズ編集部