「私、ちょっとあぶない香りがする男性が好きなんです」
ある日、気になる女性との会話で筆者が言われたひとことである。どんな会話かはさておき、このひとことに筆者は思わず、
「スナックくらいならよく行きますよ。大人の嗜みじゃないですか。」
そう返してしまった。そもそも「あぶない香り=スナックに行く男性」という謎の方程式が脳内で出来上がってる時点でまったくあぶなくないうえに、この女性からの反応も芳しくなかったのだが、それに気付く余地はまだない。
男に二言はないので、とりあえず言ってしまったものを実現させねばならないと思い、この度スナックデビューをすることになった。まったく勝手なイメージだが、スナックのママなら恋愛相談にも乗ってくれるはず。この機会に人生の先輩からアドバイスを受けてみるのもいいかもしれない。
思い立ったが吉日、その週の花金にさっそく人生初となるスナックへと足を運ぶ決意を固めた。
とりあえずスナックへ行ってみる。レトロな扉をくぐった先に待っていたのは…
今回お邪魔させてもらったのは美人ママでうわさの「ナイトスポット まこと」。
亀戸で30年もの間、様々なお客さんとふれあい、時代とともにこの街の移り変わりを見届けてきた。
しかし勇み足で来てみたはいいものの、スナック初心者にとってまず第一関門となるのが「扉を開ける」ということ。スナックの多くは窓がなく、入る前に中を覗くことができないため少々勇気がいる。意を決してドアノブを引くと…、
「あら、いらっしゃい〜、どうぞ♡」
拍子抜けするほど明るい声色と笑顔でママが出迎えてくれた。
今回は張り切りすぎて仕事を早々に切り上げてきているので、他のお客さんの姿はまだない。
真っ赤なボックスにカウンター、カラオケ機器。暖色の薄暗いシャンデリアに照らされる壁紙は、お客さんのタバコの煙で長年かけて綺麗にセピア色に染まっている。
これぞ、The・スナック!!!
第一関門でかなりの精神力を使っていた筆者はこの時点ではまだ緊張が抜けきっていなかったが、「お飲み物はビールでいいです?」という声に返事をしつつ、恋愛相談を持ちかけやすいようにカウンター席を陣取る。
ママはさすがの話し上手。レトロな落ち着きでだんだん緊張もほぐれてくる
(ワオ…!)
家で一人で飲む缶ビールもいいが、こうしてカウンター越しに出されるとなんだか美味しさも増す気がする。
「「かんぱーい!」」
グビッ
(あ、うまっ。)
仕事終わり(早退)の身体に染み渡る一杯を飲みながら、どういう流れで相談を切り出そうか考えていると、
「スナックは初めてなんですか?」
と向こうから会話を振ってくれた。
冒頭で紹介した女性と違ってここで見栄を張る必要はないので、素直に「そうなんですよ」と答えると、「こうしてね、カウンター席があってボックス席があるのがスナックなんです」と優しく教えてくれる。
そんなこんなで軽く世間話を交わしていると、店内の落ち着いた雰囲気もあってか緊張はほぐれてきて、ママの巧みな話術でするすると会話が進むようになってきた。
今ならいける…!そう思った筆者はついに恋愛相談を切り出すことに。
「あの、今気になる人がいるんですが、相談に乗ってもらえませんか?」
「あら、恋愛相談?もちろん、悩める男性にもアドバイスしますよ♡」
「(優しい…。)僕、もうすぐ30代なんですけど、高校・大学とまっとうな恋愛してこなかったんです。これって大きなハンデですよね?」
「30なんて!まだまだこれからじゃない〜。商売柄いろんな人の恋愛見てきたけど、まっとうじゃない恋愛をしていた人だってそりゃたくさんいたわよ。」
「そうなんですか?例えば?」
「んー、話を聞いてて、なんだかその人が騙されてるような気がしたり、友達の関係のままでもいいんじゃないかなって思ったり。やっぱり心配になっちゃいますよ。あんまり大きな声では言えないけどね(笑)。」
「…。」
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Edit by カメイドタートルズ編集部