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  • >【後編】「Youは何しに亀戸へ?」亀戸在住のフランス人に密着してみた。

前回までのあらすじ~

フランスから亀戸へ移住し、アパレルブランドを経営しながら子育てもしているフランス人のアナイスさんに密着したカメイドタートルズ。アナイスさんは亀戸の町がお気に入りで、めちゃくちゃ褒めてくれた。

 

アナイスさんオススメの亀戸スポットを巡る途中、お腹が空いたのでランチに行くことに。

するとアナイスさんの口から

「食べると故郷のフランスを思い出す」

という謎の食べ物が亀戸にあることを聞かされる。

それ、本当なの?一体、どんな食べ物?普通にフランス料理じゃないよね?

前回の記事はコチラ

 

故郷フランスを彷彿とさせる亀戸グルメ

ランチにやってきたのは亀戸天神社…

 

の、すぐ近くにある店。

 

あの、アナイスさん。このお店って…

「極上江戸そばが食べられる、にし田さんです」

めっちゃ日本料理じゃん!!

 

こちらの「極上江戸そば にし田」では、蕎麦の実を亀戸天神社でお清めしてから打つそう。名物の「天神そば」は大変縁起の良い蕎麦なんだとか。

ちなみに以前、カメイドタートルズでも紹介した鰻の「八べぇ」の隣のお店である。

普通にめちゃくちゃ美味しそうな蕎麦だが、なぜ故郷フランスを思い出す味なのだろうか?

 

「一番好きな日本食は何? と聞かれるといつも困るんです。餃子も好き、お寿司も好き、ラーメンも好き。一つに決めるのはとても難しいと思います。ただ、いくら食べても飽きないという意味では蕎麦です!」

「フランスにはガレットという郷土料理がありますが、ガレットの原料は蕎麦の実。蕎麦の風味は私にとって懐かしく、母国を思い出させるんですよ」

なるほど、フランスにはガレットがあったか!蕎麦とガレットが結びつくとは予想できなかった。

アナイスさんが注文したのは「すだちそば」。ひんやり冷たいつゆに、すだちのスライスがたっぷりと入った一品。

スッキリとしたすだちの酸味が、ダシ香るつゆと合わさった時の豊かな味を想像すると泣けてくる。

 

「こちらのお店は色んな種類の蕎麦が食べられるし、亀戸ならではのメニューもあるので、よく来るんです。いただきます!」

ちなみにアナイスさんが好きな日本語は「いらっしゃいませ」。この言葉には日本のおもてなしの心が表れているとのことだ。

フランスに帰った際、お店に入っても「いらっしゃいませ」と言われないので、不思議に感じることがあるそう。それぐらい、日本ではほとんどのお店で言われている言葉なのだろう。我々の感覚からすると、普通のこと過ぎて気にも留めないのだが。

 

「セボン! とても美味しいです。サワーテイスト(酸っぱい)で、少しだけ苦みがあって、それが良いアクセントになっている。ここの蕎麦は本当に美味しいです」

日本の作法(?)にのっとり、蕎麦をズズズッとすすって食べるアナイスさん。日本に移住して何年も経つので、音をたてながら食べることに対していまさら抵抗はないようだ。

しかし、毎年フランスからやってきて2週間ほど滞在するというアナイスさんの家族はそうはいかない。日本人が音をたてて食べることに少しストレスを感じているのだという。

 

「パスタのように巻いて、一口で食べることもできるの。でも、蕎麦はすすった方が美味しいですよね!」

アナイスさんは笑いながら言った。まったくもって同感だが、しかめ面をしながら食事をするご家族の様子を想像すると、日本人として胸が痛まないわけではない。

ガレットだったらすすらなくて済んだのに。

しっかりと「ごちそうさま」をしてランチタイム終了。

アナイスさんオススメの極上江戸そば にし田、要注目の亀戸グルメであった。余談だが、店主は元ボクシング選手。日本1位になったこともある実力だったらしい。蕎麦にもコシが入ったパンチを決めてくれそう。

 

亀戸オススメスポット巡り、再開

先ほどのお店のすぐ近く、亀戸天神社もアナイスさんが大好きなスポットの一つなのだそう。

 

一番好きな場所は神社の敷地内ではなく、外の側道という通ぶり。

 

この位置から見る橋に美しさを感じるそう。

「亀戸天神社はいつ来ても素晴らしい。季節ごとの草木の変化を観察するのが楽しいです。節分などのお祭りごとにも積極的に参加しますし、新年には亀戸の七福神も巡ります」

行事に参加しながら、日本の四季を感じているようだ。

 

こちらは、アナイスさんが撮影した藤の花が咲いている頃の写真。

 

そしてこれが、梅の咲く時期に撮影した写真。たしかに草木の変化を楽しんでいた。

 

腹ごなしに散歩をしながら駅前の方へ戻ってくると、亀戸餃子の前で足が止まる。

「フランスの両親が日本に来ている時に、必ず来るのがこの亀戸餃子。両親はここの餃子が一番好きだと言います」

食通が多そうなフランス人の舌をも虜にする亀戸餃子であった。

 

歩きながら、他にもオススメのスポットを教えてもらった。

「亀戸中央通り商店街の栗田青果は安くて美味しいフルーツが手に入ります。フランス人はフルーツをよく食べますが、東京に住んでいると母国にいる時と同じ種類、同じ量のフルーツを食べることはなかなか難しい。でも、栗田青果にはそれを可能にしてくれるほどのバリエーションがあるんです」

など、実にディープな亀戸情報を我々に提供してくれた。彼女はこの企画の主旨を丸わかりしている。ありがたい。

 

亀戸で暮らすアナイスさんの日常

町を徘徊していたら突然、アナイスさんに話しかける方がいた。なんと、偶然ではあるが児童館で知り合ったママ友とバッタリ遭遇したのだ。

 

「アゼルのママだー!!」

子どもが元気よく叫ぶ。

「アゼルというのは息子の名前です。この子たちはいつも、アゼルにとても仲良く接してくれています」

「私はとてもシャイな性格なので、道行く人に気軽に声をかけるなんてことはできません。 でも、息子が生まれてからは少し変わった気がします。児童館で多くの日本人のママ友と知り合い、亀戸の人々とコミュニケーションを取ることができるようになりました」

「今ではマンションの同じ階に住む日本人の友達もいますし、道端でも知り合いに会ったら挨拶を交わしますよ!」

 

アナイスさんのおかげで、また新しい亀戸の一面を見ることができた。

最後に「亀戸の魅力は、何だと思いますか?」と質問すると

「まるで小さな村のような、温かいコミュニティ」

という回答が返ってきた。たしかにそうかも。

 

「亀戸の人々はとてもフレンドリー。よく行くお店の店員さんたちも、私たちの顔を覚えてくれています。誰かとトラブルになったことは一度もありませんし、ここに住む人の心はオープンなんだと感じますね」

このご時世、景気の先行きが見通せず、不安定な情勢が続きそうだ。小さな子どもを抱えたアナイスさんの生活も楽ではなく、イラストレーターの夫も新しい稼ぎ先を探しているという話を聞いた。移り住んだ異国の地で、不安がないとは思えない。

それでもきっと、「義理と人情」を大切にするこの町で暮らすのであろう。

 

「今日はありがとうございました。また一緒に美味しい食事でも!」

昼下がりの亀戸駅前、私たちは笑顔で手を振って別れたのであった。

その笑顔が変わらぬ日常が続くことを、お互いに願って。

 

スポット紹介

スポット名:極上江戸そば にし田
住所:〒136-0071 東京都江東区亀戸3丁目2−10 大竹ビル
電話番号:03-5609-8968
アクセス:JR総武線亀戸駅 徒歩10分
営業時間:
【平日 昼】11:30~14:00
【土日祝日 昼】11:30~15:00
【夜】17:30~21:30
定休日:第一火曜日・水曜日、不定期で月1~2回
※現在は新型コロナウイルスの影響により営業時間が異なる場合があります。

Edit by カメイドタートルズ編集部