あなたは「おいてけ堀」をご存知だろうか・・・?
江東区周辺に伝わる、本所七不思議と呼ばれる怪談の1つである。
江戸時代、亀戸付近の水路では魚がよく釣れたのだが、しばしば「置いてけ〜」と、お堀の中から声が聞こえ、もし釣った魚を置いていかなければ、そのまま堀に引き込まれてしまう
という不気味な内容だ。
今回、カメイドタートルズ編集部はそんな「おいてけ堀」を調査することにした。
前段:なぜ「恨めしや〜」ではなく「置いてけ〜」なのか?
とその前に軽く前段でも。(特に意味のないパートなので、よほど暇でない限り次のパートからお読みください)
亀戸周辺ではおなじみであるものの、一般的には「おいてけ堀」奇談の知名度はそこまで高くない。
そもそも、なぜ「恨めしや〜」ではなく「置いてけ〜」なのだろう。
確かに「恨めしや〜」は、霊的な言葉として日本最大のシェアを誇るが、ここで一旦考えてみて欲しい。
恨めしいのは分かったが、 一体私があなたに何かしたのだろうか?
当事者が恨めしがられるのは百歩譲ろう。しかし、全く関係ない第三者に対して「恨めしや〜」と愚痴られる筋は断じてないのである。だいたい、恨めしいことの一つや二つ、誰にだってあるのだ。
行きたくもない飲み会に顔を出し恨めしいし、糸ようじでフロスをしたら逆に詰め物まで取れて恨めしいし、食べ放題のお寿司のシャリの密度が半端なくて腹にたまって恨めしい(まさにこのシャリこそ「恨飯」である)。誰もがそんな日々を我慢して過ごしているのだ。一人だけ特別扱いするわけにはいかない。かまってちゃんにも程がある。それに幽霊に「恨めしや〜」と言われても、一体こちらはどうしたらいいのだろうか?「はいそうですか、大変ですね」と、インスタでもフォローしてあげれば気が済むのだろうか?もし筆者のフォロワー数が少ない場合「え?恨めしくないの?」と嘲笑されそうだし、こちらのフォロワー数が多ければそれはそれで普通に「恨めしや~」となりそうで、どっちに転んでも裏目に出そうで、裏目しい。
つまり「恨めしや〜」とはリア充の戯言なのである。
それに対して「置いてけ〜」には、非リア充的生活感を感じずにはいられない。
なんせ魚を置いて行って欲しいというほどの困窮具合であり、そこには明快かつ切実な願いと憂いが込められているのである。「恨めしや〜」の曖昧さは皆無だ。
ここまで書けばお分かりだろう。
今、我々メディアが取り上げ、除霊すべき霊魂は、弱者の悲痛「置いてけ〜」タイプであり、リア充の戯言「恨めしや〜」タイプでは決してないのである。
ここまで読んで置いてけぼりになったあなた。安心してくれ。さあ、ここからが本題なのだ。
お坊さんをお呼びし、いざ除霊へ!
除霊と言えば欠かせないのがお坊さんである。
今回の調査にあたりお呼びしたのは、僧侶の修行を積む一方「ドドん」というお笑いコンビで活動している石田さん(浅井企画所属)。
ど頭から一番気になる、あの質問をぶつけてみた。
「あの・・・霊感はあるんですか?」
「いまだかつて一度も幽霊を見たことはありません。でもなぜか、今回ばかりは何かが見える気がするんですよね」
「・・・」
霊感のない人間の直感ほど信用できないものはない。
ちなみに同行した編集部の人間も、怪奇的な程に霊感はゼロ。
心霊現象とはあまりにも無縁な人生を送っており「これが本当の無縁仏だね〜」と盛り上がっている始末。
だが、こうして取材風景を撮ってみると、それらしい企画に思えてくるからまた怪奇。
気を取り直し、とりあえず我々はおいてけ堀の史跡案内板があると言われる江東区立第三亀戸中学校に向かった。
タクシーに適当な場所で降ろされ多少はウロウロしたものの、その史跡は校門の横に位置していた。
「置いてけ〜」とは言ったものの、まさか石碑が置いていかれるとは彼らも思ってもみなかっただろう。
「おいでやすこがって書いてある」
「あ、本当だ。ちなみに「置いてけ〜」とか聞こえませんか?」
「うーん、今のところ何も感じないですね」
「ちなみに霊感は・・?」
「ないですないです。ないって言ってるじゃないですか(笑)。・・・うーん、しかし何も感じないな」
「・・・」
「あ、ちょっと待ってください!」
「何ですか!?」
「この校門・・・ちょっとお洒落すぎますね」
「あ、本当だ」
石碑の横に建てられた1909(明治42)年の地図には、ハッキリと「オイテケ堀」と記されているが、実はこの言い伝えは「墨田区両国付近から江東区亀戸あたりにかけて残る」もので、おいてけ堀と呼ばれている場所はなんと一か所だけではないらしい。
どうやらここにいても拉致も霊界も“あかない”ので、我々は次のおいてけ堀に向かうことにした。
次のおいてけ堀は墨田区立錦糸堀公園にあるという。正直亀戸ではないが、どちらが本当のおいてけ堀なのか決着をつけるいい機会だ。
「おいてけ堀」に驚愕の事実が浮上
道中、足取り重く歩いていると、突如お坊さんが叫び出した。
「これ見てください!」
「『すぐ戻る 心のスキに 鍵かけて』・・・霊やもののけの類って心の隙間に入りやすいんですよね」
「でも、入ってきたことないんですよね?」
「あるわけないじゃないですか!やめてくださいよ(笑)」
「・・・」
「あ、ここよく見てください」
「ここに女性の顔が浮かび上がってます」
「おそらく、女性は20代から30代もしくは40代から50代ではないかと・・・」
「それ、元警視庁コメンテーターのやつですよね」
「ああ、そうなると霊視というより、捜査ですね」
「なるほど。ここは・・・小貝川ですね」
「いや、横十間川ですね」
「この空き地!ほら」
「釣り針のメタファーかも?もしかしたら、ここで釣り人が引きずり込まれた可能性も否定できませんよね?」
「私に聞かないでください」
「あ!ここ・・・合コンで知り合った女性に置いてけぼりにされ・・・」
「それ使えないんで大丈夫です。というか、ここまでほとんど使えないかもしれません」
編集者の心が置いてけぼりになりながらも、そうこうしてるうちに、我々一行は第二のおいてけ堀に着いた。・・・しかし!なんとそこで驚愕な事実を目の当たりにするのだった。
後編はこちら
スポット紹介
住所:〒136-0071 東京都江東区亀戸1丁目12
アクセス:JR総武線亀戸駅 徒歩10分
Edit by カメイドタートルズ編集部