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  • >鳩がたむろしていた亀戸の「但元いり豆本店」に異変!? 消えた鳩はどこへ

Googleマップの口コミ機能で「野外博物館」として登録されていた亀戸の老舗豆店「但元いり豆本店」の記事後編。

前編はこちら

鳩に狙われていた豆屋の現在

少し前まで、開店前から豆を狙ってスタンバイしていた大量の鳩たち。亀戸、いや江東区中の鳩に狙われていたと言っても過言ではないはず。そんな彼らがやってこなくなったという。

「前はあんなにいた鳩がいないとは・・・。確かに番猫ちゃんも暇そうですね」

「これは、ただの飼い猫。鳩が来てもあんまり気にしてないけどね。」

但元いり豆本店の看板猫。白と茶の2匹がいて取材をしたこの日、茶色い子はお散歩中で不在だった。

「茶色いのは元野良なのもあって、人にはあまり寄り付かないけど、こっちは人懐っこいですよ」

猫目当てにやってくる人もいるほど人気の看板猫で、店主の松本さんは「写真撮っていいですよ」といつも優しく声をかける。

当の本人は、買い物客が来てもお構いなしでくつろぐ。

「猫が鳩を追い払ったんじゃないとすると、なぜ鳩が消えたんですか?」

「海外から仕事で日本に来ていた人たちが、鳩が可哀想だって豆をあげてたんですけど、最近めっきりお店に来なくなったの。それもあって鳩は減りましたね。昔は、お店で買った豆を鳩にあげようとするお客さんのために、それ用の豆を用意していた時期もあったくらいなんだけど、今は色々と厳しいでしょ。周りの迷惑にもなるし」

「それで、以前はあんなにいた鳩が消えたんですね」

「そんなに鳩を探してるんだったら、お店の近くは減ったけど、餌をあげている人があっちのほうにいるらしいよ」

「いえ、鳩はもう…大丈夫です」

これ以上、鳩のことを聞くと不審者と思われかねないので、お店の歴史についても伺った。

大正5年創業(もしかしたらもっと前から)の但元いり豆本店

「但元いり豆本店は、大正5年創業の歴史のあるお店だと伺いました」

「そう。一応大正5年ということにしてる」

「一応?」

「いやぁ先代のお父ちゃんが亡くなって、実は詳しいことは分からないのよ。先代は93歳までやっていて、私が2代目。親の面倒をみていた末っ子の私が後を引き継いだんだけど、そのあたりのことを聞いておかなかったから」

「93歳まで現役とはお元気ですね。お父さんはなぜ亀戸で店を開くことにしたんですか?」

「お父ちゃんが浅草出身で近かったからだね。竜泉出身なの。お父ちゃんは浅草の大きな豆屋で奉公をして、それで亀戸に店を開いたみたいだよ。関東大震災よりも前からやっていたのは間違いなくて、創業して100年は過ぎてるはずなんだけどね。大正5年創業であってると思うんだけど・・・お父ちゃんは、いい加減なところがあってね。俺は樋口一葉と遊んだってよく言ってたの。でも、よくよく調べてみたら、樋口一葉が亡くなった年に生まれてんのよ。同じ竜泉出身だから適当なことを言っていたんでしょうね。なに嘘言ってんのよ!って言ってやったもん(笑)」

豆の量り売りの際には、年季を感じる升を使用する。この売り方は創業当時から変わらないそうだ。

「ユーモアのあるお父さんですね。そういえばこちらのお店って本店となってますけど、どこかに支店もあるんですか?」

「昔、豆屋と乾物屋をやっていたの。今は升元さんのお弁当を販売しているところ(亀戸升本 すずしろ庵)にもう一店舗あったのよ」

「では、ずっと亀戸でご商売をやられていたんですね。当時から亀戸を見てきて、町は変わりましたか?」

「それはもう変わったね。布団屋さんとか文房具屋さんとか色々あったんだけど、みんな辞めてしまったから。通りにあったレコード屋さんもこの前お店を閉めちゃったし」

「天盛堂さんですね。あちらも老舗だったので寂しいですよね。このお店は、次の代の方は決まっているんですか?」

「今も姪っ子2人とお店を一緒にやってるのよ。でもこんな商売ダメだからね、いずれ辞めちゃうかな(笑)」

おかあさんは冗談交じりにそう語っていたが、住民に愛され続ける但元いり豆本店の味はいつまでも長く続いてほしい。

 

 

多くの人々が往来する通りにあるその店は、在りし日の下町を感じさせる。

歴史ある木枠のショーケース、升による量り売り。

談笑をしにやってくるお客や、お客なんてお構いなしに店内を闊歩する猫。

そんなレトロな雰囲気は眺めているだけでも楽しい。きっと昔の亀戸はこうだったんだろうなという学びを与えてくれるのだ。そういう意味では野外博物館という表現は、あながち間違いではないのかもしれない。お近くを通った際には、ぜひお店を訪れてもらいたい。

 

また最後に、鳩への餌やりは近隣トラブルの元になりかねない。餌を与えること自体を禁止している自治体もあるほどだ。何よりも但元いり豆本店のいり豆の素朴な美味しさは、鳩ではなくご自身で味わってもらえればと思う。

 

スポット紹介

スポット名:但元いり豆本店
住所:〒136-0071 東京都江東区亀戸2丁目45-5
アクセス:JR亀戸駅 徒歩6分
電話番号:03-3681-1520
受付時間: 10:30頃~20:30(木曜定休)
※木曜日が祝日の場合には営業

Edit by カメイドタートルズ編集部